稲垣智子氏講演会「“Artist as Occupation” ― アーティストとして生きること」

2011年度 第2回 情報メディア学科講演会

カテゴリー
講演会
開催日時
2011年6月29日(水)
場所
同志社女子大学 京田辺キャンパス 知徳館3号棟1階C131
講師
稲垣智子氏

講師プロフィール 稲垣智子氏(美術作家)

1975年大阪生まれ。2001年英国ミドルセックス大学美術学部卒。パフォーマンスやインスタレーションなど、様々なメディアを用いた表現活動を行う。国内外での個展やグループ展、メディア祭など精力的に活動。
おもな展覧会は『こもれび(水戸芸術館/2003)』『夏の蜃気楼展(群馬県立館林美術館/2005)』『トランスメディアーレ2010(The House of World Cultures/ベルリン)』、個展に『Dune/Trip(PH Gallery/NY/2005)』『嘔吐(大阪府立現代美術センター/2007)』『Pearls(The Third Gallery Aya/大阪/2010)』などがある。

REPORT

昨年、初めて稲垣氏の作品を拝見して以来、私は彼女の作品に魅かれ、mscギャラリーでの展示を希望していました。そして今回ご縁があって、その希望がかなうことになりました。
講演会では、今回のmscギャラリー展のために制作された、同志社女子大学の学生主演の新作『間―あいだ』のメイキング過程や解説、過去の作品などを紹介しながら、本講演会のタイトルである“アーティストとして生きること”についてお話してくださいました。

東日本大震災がきっかけで「正当な怒り」や「行き場のない怒り」などについて考えてこられた稲垣氏は、怒っている人と怒っていない人の間で行き来する“差異”と、その“不思議さ”について強調されていました。新作『間―あいだ』はそのことをテーマに制作されており、作品の一部である映像は、向かい合った女性の会話で構成されています。そして、その会話や動きには、違和感が存在します。しかし、その違和感の原因となる矛盾は鑑賞者が見るうちに気がつけばよいとおっしゃっていました。また、使用された絵コンテや撮影風景の写真を見せながらの説明では、撮影場所の背景はガラスで、照明や人物の影が映り込まない工夫をすることが大変だったことなどをお話くださいました。

稲垣氏は英国の美術大学で学ばれたため、日本と海外のアートの社会的立場の違いなどについてお話しくださいました。英国ではギャラリーにポートフォリオを持ち込み、認められると無料で展覧会を開催できるそうです。そのため、帰国後日本でも同じようにすると、お金でギャラリーを借りる制度があることに驚いたそうです。また、英国では企業がアートにお金を出すことが当たり前だそうです。

インスタレーションは、空間全体がアートとなる作品です。今回の『間―あいだ』のように映像と写真を用いた作品もあれば、小物や舞台美術のような大きなものを多数使用した作品もあります。そのため、アーティスト個人では制作を出来ない場合も出てきます。「作品を作るにあたり、いかに人に協力をしてもらったかということも作品として重要である」とおっしゃっていました。稲垣氏ご自身も、彫刻家やパティシエなどの協力や、企業に直接連絡を取り、材料の提供をお願いして制作されているそうです。

海外ではアートが身近であり、一般の人も美術館を訪れたり、作品を購入したりすることが当たり前のようです。海外と日本とのアートの位置づけの違いを肌で感じておられますが、決して「海外が良くて日本が駄目だ」といったことはおっしゃらず、アーティストとして日本で活動していくことを真摯に考えておられました。

最後に、学生にはこれから沢山の可能性があること、これから何でもできるということを語られていました。「アーティストのリアルな話が聞けてよかった」「作品を作ることは特別でないと分かった」といった感想を聞き、講演会に参加した学生それぞれが、これからの活動に影響を受けたのではないかと思います。
(文:情報メディア学科3年次生 有元梨沙)

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