結城円氏講演会『Imaging Catastrophe: 「フクシマ」を捉えた写真の可視性、不可視性』

2018年度 第1回 メディア創造学科講演会
『Imaging Catastrophe: 「フクシマ」を捉えた写真の可視性、不可視性』

本講演会では、ドイツと日本の震災を取り巻く状況の比較から、
情報伝達における写真の役割・機能について考察を試みたいと思う。

その中でも特に、アート分野で震災をテーマにした写真作品が
どのようなコンテクストで発表され、受容されているのかについて、
日独の比較から、写真の可視性・不可視性に焦点を当てる。

アート分野でドキュメンタリー的要素を持った写真が受容されることにより
可視化されるものとは何なのか?
不可視のままの要素とは何なのであろうか?

カテゴリー
講演会
講師
結城円氏
開催日時
2018年6月1日(金) 16:30〜17:30
場所
同志社女子大学 京田辺キャンパス 聡恵館ラーニングコモンズ・イベントエリア
参加対象
同志社女子大学在学生および一般
申込み
不要、入場料無料
お問い合わせ
同志社女子大学 メディア創造学科 事務室
TEL:0774-65-8635

講師プロフィール 結城円氏

写真研究者。1976年米国サンタモニカ生まれ。2010年ドイツ・デュースブルク=エッセン大学芸術・デザイン学科写真史・写真論講座にて博士号取得。2011年から2013年までAlfried Krupp von Bohlen und Halbach財団「写真専門美術館キュレータープログラム」キュレイトリアル・フェローとしてフォルクヴァング美術館、ミュンヘン市博物館、ドレスデン国立美術館、ゲッティ・リサーチ・インスティテュートに勤務。2013年から2016年までデュースブルク=エッセン大学芸術・芸術学学科講師。現在、展示カタログなどの執筆のほか、ルートヴィヒ・マクシミリアン大学ミュンヘン、エッセン大学で教鞭をとる。

REPORT

このたび、写真研究者の結城円氏に講演をしていただきました。

氏はドイツ在住の写真研究者で、10年以上にわたり海外で、
写真を通した日本の視覚的な位置付けを研究してこられた方です。

講演の主題は、2011年に発生した東日本大震災です。
この震災は、海外における日本のイメージに強い影響を与えました。
今世紀におけるメディアの力、そしてメディアをクリティカルに解読するためのリテラシーを身につけることの重要性を再認識する講演となりました。

講演は、2011年3月以前の、日本の視覚的ステレオタイプの紹介から始まりました。幕末以来、提示されてきた「日本と言えばゲイシャ、フジヤマ、サムライ」の印象が、海外では今でも根本的なビジュアルとして捉えられています。

東日本大震災は、特にドイツのメディアで大きく取り上げられました。
3つの主な災害‐地震、津波、原発事故‐の中で、特に重視されたのが原発事故です。現場の写真や動画と合わせて、日本の視覚的ステレオタイプ(ゲイシャ、フジヤマ、サムライ)にポピュラーカルチャーをイメージするものが加えられてビジュアル化されました。
例えばゴジラ(監督:本多猪四郎、1954年)やコスプレ、葛飾北斎の波(冨嶽三十六景「神奈川沖浪裏」、1831〜33年頃)が使用され、捉えがたい事故の深刻さ、そして人間としての無力さをビジュアル化している物が多くありました。

さらに結城氏はドイツメディアの福島に対する興味を、統計で表した調査を紹介してくださいました。イギリス、フランス、スイスとドイツの報道の比率を表したダイヤグラムからは、各国におけるメディアの福島への興味の高さが、自国の原子力発電に関する猜疑心と関連していることが分かります。以来、ドイツでは脱原子力を追求する声が高まっているとのことです。

講演の後半では、写真をメディアとするアーティストの作品を取り上げ、それを解説していただきました。目に見えない放射線、物体的な形が無い恐怖、そして作家自身の困惑が作品に現れていました。

写真というメディアは時代、文化圏、そして大衆の情緒を反映します。
メディアを発信する者、受信する者、そしてメディアを研究し創造する学科として、メディアをクリティカルに解読できるリテラシー能力を身につけること、育てることの重要さを感じる内容でした。

(メディア創造学科 髙木毬子)

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