水江未来氏 講演会 ワンダー・フルな抽象アニメーション!〜水江未来のアニメーションが出来るまで〜

2014年度 第1回 同志社女子大学 情報メディア学科講演会

カテゴリー
講演会
講師
水江未来(みずえみらい)氏
開催日時
2014年4月25日(金)16:45〜18:15
場所
同志社女子大学 京田辺キャンパス 知徳館 C131教室
参加対象
在学生および一般 入場無料
お問い合わせ
情報メディア学科事務室
Tel.0774-65-8635

講演概要

抽象アニメーションとは? 物語のないアニメーションとは? 音楽とアニメーションの関係など、これまで制作してきた自身の作品の解説をします。

略歴

1981年生まれ。多摩美術大学大学院でアニメーションを学ぶ。「細胞」や「幾何学図形」をモチーフにした抽象アニメーション作品を多数制作し、主に国際映画祭を舞台に活動をしている。世界4大アニメーション映画祭(アヌシー・オタワ・広島・ザグレブ)すべてにノミネート経験があり、アニマドリード2009(スペイン)では、『DEVOUR DINNER』が準グランプリを受賞。また、第68回ヴェネチア映画祭オリゾンティ部門(2011)に『MODERN No.2』がノミネートされ、アヌシー国際アニメーション映画祭2012では、SACEM賞(最優秀音楽作品賞)を受賞。最新作「WONDER」は、第64回ベルリン映画祭短編部門(2014)にノミネートされる。

MONSTRAリスボン国際アニメーション映画祭2013(ポルトガル)では、長編部門の審査員を務め、回顧上映と特別講義が行われた。広島国際アニメーションフェスティバル2012、SICAF2010(韓国)の国際選考委員を務め、国内では第17回~19回・学生CGコンテストの審査員を務める。『CALF』の設立・運営メンバーで、同レーベルから作品集DVDを発売。また、短編アニメーションの祭典『TOKYO ANIMA!』のキュレーションも務める。

依頼作品では、松本亨(Psysalia Psysalis Psyche)のミュージックビデオ『AND AND』を制作し、アニフェスト国際アニメーション映画祭2012(チェコ)でミュージックビデオ部門の最優秀作品賞を受賞。トクマルシューゴのデビュー10周年を記念したMV『Poker』およびウェブサイトでの映像展開。SEKAI NO OWARI のMV『炎と森のカーニバル』内に登場するモンスターのキャラクターデザイン。RADWIMPSのMV『実況中継』のパートアニメーション。また、NHK・Eテレ『シャキーン!』番組内の歌コーナー「ホンマツテントウ虫」を制作。テレビ東京「しまじろうのわお!」では、知育コーナーのアニメーションパートを制作。播磨研究所ピコスコープのPV『ピコトピア』や、カンヌライオンズ 国際クリエイティビティ・フェスティバル2013での博報堂のPR映像『Creative Alchemy』などを手がける。その他、中村勇吾とのコラボレーション企画として「FRAMED」での作品展開や、「dedegumo」の腕時計デザイン、山田悠介『ブレーキ』の表紙、小説すばるにてPUFFY大貫亜美の連載エッセー『たぬきが見ていた』のイラストを担当するなど、独自のグラフィックデザインを活かして幅広く活動している。

日本アニメーション協会・理事。ASIFA日本支部・会員。多摩美術大学情報デザイン学科メディア芸術コース/京都精華大学芸術学部映像コース・非常勤講師。

作品歴(アニメーション)

『WONDER』(2014年) ベルリン映画祭2014(ドイツ)・ノミネート
『MODERN No.2』(2011年) ヴェネチア映画祭2011(イタリア)・ノミネート/アヌシー国際アニメーション映画祭2012(フランス)・SACEM賞(最優秀映像音楽賞)
『AND AND』(2011年) ファントーシュ国際アニメーション映画祭2011(スイス)・ノミネート/アニフェスト国際アニメーション映画祭2012(チェコ)MV部門・最優秀賞
『TATAMP』(2011年) シュトゥットガルト国際アニメーション映画祭2011(ドイツ)・ノミネート
『MODERN』(2010年) 飛騨国際メルヘンアニメ映像祭2010・特別奨励賞(準グランプリ)
『PLAYGROUND』(2010年) アヌシー国際アニメーション映画祭2012(フランス)・ノミネート
『METROPOLIS』(2009年) SICAFソウル国際漫画&アニメーション映画祭2009(韓国)・オープニング作品
『JAM』(2009年) 広島国際アニメーションフェスティバル2004・ノミネート/アニマニマ国際アニメーション映画祭2009(セルビア)・特別芸術賞
『DEVOUR DINNER』(2008年) アニマドリード国際アニメーション映画祭2009・準グランプリ
『LOST UTOPIA』(2007年) オタワ国際アニメーション映画祭2008・ノミネート
『FANTASTIC CELL』(2003年) 広島国際アニメーションフェスティバル2004・ノミネート

新作が映画館で巡回上映中です。

オフィシャルサイト
http://wonder.calf.jp/wonderfull/

関連イベント

水江未来アニメーション原画展

REPORT

「細胞」や「幾何学図形」をモチーフにした抽象アニメーション作品を多数制作し、主に国際映画祭を舞台に活動をしているアニメーション作家・水江未来氏をお招きし『ワンダー・フルな抽象アニメーション! ~水江未来のアニメーションが出来るまで~』と題してご講演いただきました。講演では、水江氏のアニメーション作品も数多く上映され、その独特で緻密な映像世界と軽妙なトークに会場もたいへん盛り上がりました。

水江氏の作品は全て手書きの原画を用いた「抽象アニメーション」と呼ばれているものです。作品の多くは、何か具体的なイメージが表象されているものではなく、抽象的なイメージの連鎖によって何ともいえない動きが画面の中に生まれています。例えば「細胞」は水江氏の作品では頻出するモチーフです。一つ一つが細密なペンで描画され、原画1枚でもその緻密さに圧倒されるのですが、アニメーションではその「細胞」一つ一つがまるで意思をもっているかのように動き出します。それに対して、《MODERN》や《MODERN No.2》では方眼紙上に「幾何学図形」を描き、現実と虚構の間をシャープに表現しています。そして最新作の《WONDER》では計8,000枚以上の様々なモチーフの原画を手書きで描いています。(同じ原画は一切使っていないそうです。)多くの原画を手で描く事で「描きながら湧き出るイメージ」を次から次へと生み出しているのです。《TATAMP》の制作では短いアニメーションの断片に音をつけ、それらを組み合わせる事で、アニメーションが完成すると同時に音楽も完成する、という実験的な手法を用いています。その他の作品でも映像と音の組み合わせにこだわりが見られます。物語を持たない抽象的なアニメーションにとっては、観る人に様々なイメージを想像させられる音は、絵と同じくらいに重要なものなのです。

また、個人の制作だけでなく、MVや子供向けのテレビ番組などのクライアントワークについてのお話も興味深いものでした。これらは個人での制作ではなく、多数の人が関わって一本のアニメーションが作られています。また、企業などのクライアントからの要望もあり様々な制約の中での制作になります。しかし、協同して作り上げて行く過程からはリクエスト以上のものが生まれる「複数の人が作る面白さ」があるそうです。

水江氏は大学卒業後も自身の制作活動を地道に続けてきました。その中で「短編アニメーションを制作して生活するということ」を常に考えながら活動をしてきました。言い換えれば、「いかにお金を集めて制作するか?」ということです。クライアントワークを行う事での人の繋がりが新しい仕事を生む事もあるそうです。現在ではアニメーション作品を発表するためのレーベルの設立を始めとして、単に自身の作品を作るだけでなく、上映会や展覧会を企画するなどアニメーションの未来を見据えた様々な活動をしています。

水江氏のお話からはご自身が携わる“アニメーション”に対する深い愛が感じられ、これから社会に出て何らかの制作活動を続けたい学生を後押してくれるものとなりました。そしてまた、作品を社会に広める活動をしたい学生にとっても、今後の活動の意義を見いだせる貴重な機会となりました。

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