河瀬直美監督講演会「表現と交流 -映画制作を通じて- 」
2007年度 第3回 情報メディア学科講演会
- カテゴリー
- 講演会
- 開催日時
- 2007年11月7日
- 場所
- 頌啓館ホール
- 講師
- 河瀬 直美監督
REPORT
情報メディア学会第三回総会開催に際して、映画「殯(もがり)の森」で2007年第60回カンヌ国際映画祭コンペティション部門のグランプリを受賞された映画監督・河瀬直美氏をお招きし、「表現と交流〜映画制作を通じて〜」と題してご講演いただきました。氏は10代の頃からドキュメンタリー映画を撮りはじめ、「につつまれて」「かたつもり」が山形国際ドキュメンタリー映画祭で高い評価を受けました。父や祖母、自分と深い関係にある人を鋭く見つめたこれらの初期作品からは、氏の置かれた状況への共感とともに観る者を映像の中に引き込んでいく強い力が伝わってきました。その後、“カメラを持つことで、主観的にだけでなく客観的に対象を捉える視線を獲得”した氏は、初の35mmフィルムの劇場映画「萌の朱雀」の制作に取り掛かります。奈良の吉野を舞台にしたこの作品は、山奥での過酷な撮影となりましたが、現地の人達との交流、そこで交わされた言葉が氏を励まし、1997年カンヌ国際映画祭カメラドール(新人監督賞)を史上最年少で受賞するという快挙を成し遂げます。受賞後もマス・メディアの華やかな出迎えに心を奪われることなく、常に自分自身や自分に関わる人々を深く見つめ、苦悩しながらも希望を捨てず制作を継続する氏。その作品の濃厚な表現は他の映画には求め難いものであることを実感しました。今回の講演で初めて氏の作品に接せられた方も多数いましたが、作品にこめられたメッセージ、氏の語る熱い言葉は、来場者の心を強く掴んだことでしょう。